春は
一年一組 斉藤 美紀
あなたも四季の風景を想像しながら書きましょう。そんな宿題が出たので書いています。実際見て心打たれたわけでもないのに書けと言われて書くのはどうかな、というのが私の本音ですが、単に先生との感性の差かもしれないのであまり大きなことを言うのはやめておきます。
さておき、春はやはりさくらでしょう。桃色の花が一斉に咲き、そして舞い散るその光景は、まるでゆ
「何書いてるの?」
突然声をかけられ、美紀は思わずタブレットを裏返した。振り返ると同級生の翼が立っている。
「帰ろうよ。晴海も待ってる」
翼は窓の外を指差した。校門の前で晴海が大きく手を振っている。
「宿題?」
晴海が聞いた。
「そう。案外難しくてさ。晴海は書けた?」
美紀は大きくため息をつく。
「うちはホラ、母さんが得意だから、そういうの。手伝ってもらってもう終わった。各地の祭りのレビューで埋めた」
他力本願の割に晴海は得意げだ。
「ブロガーだもんね、晴海のお母さん」
茶々を入れる翼の額に、晴海はチョップを落とす真似をする。
「ライターだってば。それもう死語じゃん」
美紀は笑い、つられて二人も笑い出した。
「ねえヨッちゃん」
ひとしきり笑った後、翼が聞いた。
「さくらって、何?」
美紀は一瞬でその意味を理解して、赤面した。読まれていたのだ。
「ねえねえ、何?先生には見せるんでしょ?僕にも教えてよ」
翼にせがまれて、仕方なく美紀はタブレットを立ち上げ、アルバムを開いた。晴海も覗き込む。
「これ、旧時代の花」
百科事典からコピーしたたくさんの写真には、あたり一面薄紅色の景色。
「うわあ。綺麗だねえ」
翼が感嘆の声を上げた。
「だろ?これがさ、街中どこにでもあったんだ」
美紀は作文を読まれた恥ずかしさも忘れ、宝物を自慢するように次々と写真をスライドさせる。
「古典だから古代の花をレビューってこと?ヨシキらしいなあ」
状況を飲み込んだ晴海は、感心したような呆れたような顔をした。
「でも先生、怒るんじゃない?」
三人は顔を見合わせ、真っ赤になって湯気を立てる先生の顔を想像して、また笑い出した。その遥か頭上では、むき出しの宇宙が静かに輝いていた.