二等星の怪奇譚

二話 湖水の和泉

東都の田舎、隅の隅の辺鄙なところに、ある剣術道場があった。

そこは田舎ならではといったところか、門下生はたったの数人であったが、精鋭ばかりであった。先の全国大会では上位を独占し、実力を世間に知らしめた。

だが、評判を聞きつけた余所者が入門を申し入れても、道場の長は、師範は、聞き入れなかった。故に、今だに少人数のまま、稽古を続けている。

そんな道場を経営する一家の名を、和泉家という。

「ちょっと翠!薬は⁈」

「飲んだ」

「嘘つけ!一日どころか数週間分の薬が残ってるんですけど!どんだけサボったんだ!」

「うっせぇ」

ある家の居間。日本家屋のようで、畳の匂いが香る部屋には台所が隣接している。その中から、ちゃぶ台の前に座る少年へ声をかける少年。黒いエプロンをかけている様が不思議なくらいによく似合う。

「うっさくもなるわ!今日薬もらいに行く日なんだぞ!一緒に行くからな!」

「はぁ⁈なんでだよ一人で行くわ」

エプロンをかけた少年へ怒鳴る少年は、茶碗を持ったまま台所へ顔を向けた。容姿端麗とはこのことを言うのだろう、全てのパーツが完璧な大きさ、位置で顔に収められている。エプロンの少年もさして怒鳴る少年に負けていないのだが、どちらかを選べと言われたら、誰もが必ず怒鳴る少年を選ぶだろう。肌の白さが、より美しさを際立たせているように思われる。

「そろそろお前の悪事を晴らす時が来たようだ」

「何カッコつけてんだキメェ・・・やめろやめろオタマを振り翳すんじゃねぇ!お前の腕力理解してるか⁈だからやめろっつってんだろうが近寄るな!」

「すーいー」

「わかった、ちゃんと飲むし、病院についてきていいから!」